サイバーリスク/建設業
「今回の工事代金から、こちらの口座へお願いします」。協力会社や資材業者の名前で届いたメールを、そのまま経理担当者へ回していませんか。
建設会社や工務店では、現場担当者が請求内容を確認し、事務所が振り込むなど、複数の人が支払いに関わります。工事名や金額が合っていても、振込先の変更まで本物とは限りません。建設業の保険を考える際にも、工事中の事故とは別に、送金に関するリスクを整理しておきましょう。
取引先の名前や工事名が合っていても確認を
取引先や経営者になりすまし、偽の口座へ送金させる手口は「ビジネスメール詐欺」と呼ばれます。IPAは、突然の振込先変更や支払いを急がせるメールに注意を促しています。
想定例:下請会社を名乗る相手から、進行中の現場名を記した請求書が届きました。金額は打ち合わせどおりですが、「口座変更のため、今回はこちらへ」と書かれています。
この場合、請求額の確認だけでは不十分です。「工事内容の確認」と「口座変更の確認」を分け、普段から把握している担当者へ連絡することが大切です。
工事代金を振り込む前の3STEP
STEP1 口座変更と急ぎの依頼をいったん止める
「今日中」「担当者には連絡しないで」と急がされても、そのメールだけで送金を進めないルールを決めます。
送信者の表示名だけでなく、メールアドレスや返信先も確認しましょう。ただし、見た目の確認だけで本物と判断せず、口座変更そのものを確かめます。確認できない場合の相談先も、あらかじめ決めておくと対応しやすくなります。
STEP2 以前から知っている連絡先へ電話する
受信したメールに返信するだけでは、同じ相手に確認することになります。メール本文や添付請求書に新しく書かれた電話番号も、そのまま信用しないようにしましょう。
警察庁は、名刺や自分のアドレス帳などにある連絡先を使い、電話等のメール以外の方法で送金内容を確認するよう案内しています。
STEP3 確認結果を残してから支払う
誰が、いつ、取引先の誰に確認したかを記録します。工事名、請求額、支払先、変更理由をそろえ、口座情報を変更する担当者と承認する人を決めましょう。
少人数の工務店や一人親方でも、「変更時は電話確認し、結果を記録する」という短い手順なら始めやすくなります。元請・下請との取引開始時に、口座変更時の連絡方法を共有しておくことも役立ちます。
振り込んだ後に偽メールだと分かったら
まず、送金に利用した銀行へ速やかに連絡し、送金の取消しや組み戻しについて相談します。手続きをしても、資金を必ず回収できるとは限りません。
同時に社内責任者へ報告し、受信メール、添付請求書、振込記録、やり取りの経過を保存します。最寄りの警察署にも通報・相談してください。取引先への確認は、メール以外の連絡経路を使いましょう。
メールアカウントの不正利用が疑われる場合は、管理担当者や保守会社へ連絡し、記録の保全と被害拡大防止を相談します。
サイバー保険で「送金したお金」も対象になる?
「サイバー保険に加入しているから、偽口座へ振り込んだお金も補償される」とは判断できません。
契約確認では、詐欺による送金損失と、原因調査・法律相談などの対応費用を分けて相談しましょう。なりすましメールによる送金が対象となるか、必要な特約や対象外となる事項があるかも確認点です。
加入先には、メールの内容、送金までの経緯、銀行や警察への連絡状況を具体的に伝えてください。
工事名・請求額が正しくても、振込先変更の確認は別に行いましょう。「変更時は、以前から知っている番号へ電話する」を支払いの共通ルールにすることが大切です。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。送金の取消し・資金回収の可否や保険の補償・支払条件は、個別の状況と契約内容によって異なります。金融機関、警察、加入先等へご確認ください。
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